農業どぼくろく -農業土木録-

農業土木の仕事をしながら、農業土木関連の資格試験を取得する勉強内容を書いています。

農業水利施設の頭首工の機能保全

ストックマネジメントということで、類題として、頭首工の機能保全について回答してみようと思います。頭首工は単一の施設ではないため、今回は基本事項だけにしておきます。多分、問題Ⅱ-1でこの部分を深堀するには枚数が不足するので、ある程度要点を絞っておく必要があると想定するからです。

 

問題

「農業水利施設の頭首工の構成施設について説明し、各施設のうち3つ以上の施設についての管理における留意点を述べよ。」

 

 

1.頭首工の構成施設

機能保全の手引きより抜粋すると、頭首工は4つに構成されています。頭首工の構造を覚えるために、イメージしやすいように解説していきます。解説は私の知識をまとめるためのものですので、あくまでも参照にしていただく程度でお願いします。また、不備などありましたらご教授いただけますと助かります。

 

①取入口 - 取水庭、ゲート、計量施設

 

頭首工は川から農業用水を得るため、取入口(とりいれぐち)から用水を流入させます。その時に、水の流れが速いと勢いがついていて施設を強固にしないといけません。そのため、流れを緩やかにする取水庭(しゅすいてい)、流量を調整するゲート、流量を計測する計量施設があります。これらが取入口グループです。

 

②取水堰 - 堰体、エプロン、土砂吐、洪水吐、ゲート

 

次に取入口だけですと川の水位が低い時には流量を確保できない場合があります。そのため、川をせき止める取水堰(しゅすいぜき)を設置します。この堰の本体を堰体(えんたい)といいます。この堰は固定のものと稼働するものがあり、稼働するものはラバーで出来たものや転倒するもの、ゲートで出来たものがあります。堰体で川の流れをすべて止めるのではなくて、越流させて下流にも水が流れるようにしていきます。その時、越流した水が下流の床を洗堀(せんくつ)していくようになりますので、この部分を保護するためにエプロンを設置します。その他、河川の水は土砂を含んでいますので、稼働堰の場合はその土砂を出す土砂吐(どしゃばき)、豪雨などで河川水位が上昇した時に水を出す洪水吐(こうずいばき)を設置しています。これが取水堰グループです。

 

 

③附帯施設 - 魚道・沈砂池・その他(舟通し等)

 

附帯施設としては、川をせき止めているので、魚を主とした河川生物が上下流を行き来することが出来なくなってしまいます。そこで、魚が通る道と書いて魚道(ぎょどう)を設置しています。また、同時に船が通れないというのもありますので、舟通し(ふなどおし)、河川水には土砂が含まれているので、その土砂を沈めて用水として利用する沈砂池(ちんさち)などを設置しています。これが附帯施設グループです。

 

④管理施設 - 操作設備・管理橋・その他(受配電設備、安全施設等)

 

最後に頭首工を操作したり、様子を見に行くのに上ったり渡ったりする管理橋、当然電気を用いて稼働させますので受配電設備、転落などしないように安全施設を設置しています。以上が管理施設グループです。

 

2.各施設の管理における留意点

各施設といっても、大きくはコンクリートで出来た施設と施設機械設備の集合体なので、分かりやすいのはコンクリートの部分だと思います。そこで、機能保全の手引きから抜粋します。

 

①固定堰

 

無筋コンクリートが主要な構造材料であり、性能低下はコンクリートの摩耗などコンリート自体の劣化と、洗掘やパイピングによる変形・不同沈下など構造物の外形的な状態に着目する。

 

②可動堰

 

鉄筋コンクリートが主要な構造材料であり、性能低下はコンクリートのひび割れや摩耗などコンリート自体の劣化と、洗掘やパイピングによる変形・不同沈下など構造物の外形的な状態に着目する。

 

③エプロン

 

鉄筋コンクリートが主要な構造材料であり、性能低下はコンクリートのひび割れや摩耗などコンリート自体の劣化と、洗掘やパイピングによる不同沈下など構造物の外形的な状態に着目する。

 

④護床工

 

無筋コンクリートブロックや捨石が主要な構造材料であり、下流側の洗掘を受けて護床工下部の河床材の吸出しによる不同沈下や洪水による流出を生じやすいことと、ブロックの摩耗が進行すると所定の減勢効果が得られず、下流側の河床材の吸出しや洗掘を受けるため、護床工下部の空洞化や不陸が進行しやすいので、これらの部分について着目する。

 

⑤護岸・取付擁壁

 

取付部の護岸や高水敷保護工は背面土砂や基礎土砂の吸出しによる変形やひび割れ変状が生じやすい。水中部の洗掘が著しい場合は、土砂の吸出しの危険性が高いため、水中部の洗掘状況を把握しておくことが望ましい。

 

⑥魚道

 

魚道は、コンクリートのひび割れや摩耗など、コンクリート自体の劣化以外に、洗掘・堆砂による河床変動やミオ筋の変化等によっても、その機能に支障をきたす場合があることから、コンクリート部材等の劣化だけでなく河川状況の変化も継続的に把握しておく必要がある。

 

 

以上ですが、やればやるほど、用語(キーワード)の理解がもしかするとⅡ-1攻略なのかなと思い始めてきました。ストックマネジメントの最後は、用語のまとめをしておこうと思います。