農業どぼくろく -農業土木録-

農業土木の仕事をしながら、農業土木関連の資格試験を取得する勉強内容を書いています。

農業水利施設の水路トンネルの機能保全

ストックマネジメントに関する過去の出題では、平成27年度に「開水路」、平成28年度に「パイプライン」、平成30年に「ポンプ場」が試験に出題されました。この問題の類題は是非押さえておきたいと思います。平成30年に農水省の改定された設計基準で「ポンプ場」と「水路トンネル」の二つでしたので、今回は「水路トンネル」について類題を解いていきます。

 

問題

「農業水利施設の水路トンネルの特性・区分による分類について説明し、性能管理における覆工形式ごとの着目点について述べよ」

 

 

 

 

①水路トンネルとは

用水や排水を通水する施設を水路といい、その水路にも開水路と菅水路(パイプライン)に分けられます。分けられた開水路の中のひとつにトンネルがあります。つまり、用排水を通水するトンネル施設を水路トンネルというわけです。

 

②水路トンネルの水理特性による分類

・無圧トンネル

計画流量が自由水面をもって流れ、内水圧が作用しないトンネル。

・圧力トンネル

計画流量が満流となり、内水圧が作用するトンネル。

圧力トンネルは、コンクリート覆工形式と内張管形式に区分される。

 

③ 水路トンネルの地山の地質区分による分類

・岩トンネル

比較的風化の進んでいない岩盤や、固結度の高い軟岩等からなる地山に構築されるトンネルで、覆工形式としては、素掘り、モルタル・コンクリート吹付け、無筋コンクリート覆工(支保工無)が採用される場合が多い。

・土砂トンネル

未固結の土層や固結度の低い軟岩等からなる地山に構築されるトンネルで、覆工形式としては、無筋コンクリート覆工(支保工有)、鉄筋コンクリート覆工(支保工有)が採用される場合が多い。

 

④水路トンネルの断面形による分類

・円形

圧力トンネルの場合、内空断面形状は原則として円形が選定されるほか、シールド工法等の機械施工による場合は円形が選定される。

・馬てい形

トンネルの内空断面の直径がおおよそ2.0 m 以上の無圧トンネルでは、馬てい形断面が選定される場合が多く、農業用水トンネルの多くは標準馬てい形です。

・ほろ形

トンネルの内空断面の直径がおおよそ2.0m以下の無圧トンネルでは、ほろ形断面が選定される場合が多い。

 

⑤水路トンネルの覆工形式による分類

・無筋コンクリート覆工形式(支保工有・無)

無筋コンクリート覆工形式は、土被りが小さい等地山が安定していない部分を除き、通常、トンネル本体で採用されるケースが多い。

・鉄筋コンクリート覆工形式(支保工有)

鉄筋コンクリート覆工形式は、土砂トンネル等において、地山が安定していない場合に採用されているケースが多い。

モルタル・コンクリート吹付け形式

モルタル・コンクリート吹付け形式は、無圧トンネルや岩トンネルにおいて、地山が比較的安定している場合に採用されているケースが多い。

・素掘り形式

素掘り形式は、岩トンネルにおいて、地山が安定している場合に採用される。

・内張管形式

内張管形式は、圧力トンネルにおいて、地山が安定していない場合や内水圧が大きい場合に採用されているケースが多い。

 

水路トンネルはこういった形式が異なっているので、機能保全するにしても構造によって異なり、分類をみてもわかる通り、地山の影響が一番大きいです。故に、覆工形式が選択されたのは、地山の影響を加味して選定されていることから、個々の覆工形式ごとに性能管理していくことが次からの回答になります。

 

⑥覆工形式ごとの性能管理の着眼点

1)トンネル本坑

・無筋コンクリート覆工形式(支保工有・無)

無筋コンクリート覆工形式は、土被りが小さい等地山が安定していない部分を除き、通常、トンネル本体で採用されるケースが多く、地圧(塑性圧、緩み圧、偏圧)によるひび割れや変形といった外形的な構造状態に着目した性能管理を行うことを基本とする。

なお、圧力トンネルの場合では、内水圧によりひび割れや変形を生じる場合があることに留意する必要がある。

・鉄筋コンクリート覆工形式(支保工有)

鉄筋コンクリート覆工形式は、地山が安定していない場合に採用されているケースが多く、その構造機能の低下は、地圧の影響に大きく左右される。このため、地圧(塑性圧、緩み圧、偏圧)によるひび割れや変形といった外形的な構造状態に着目した性能管理を行うことを基本とする。

なお、圧力トンネルの場合では、内水圧によりひび割れや変形を生じる場合があることに留意する必要がある。

モルタル・コンクリート吹付け形式

モルタル・コンクリート吹付け形式は、無圧トンネルや岩トンネルにおいて、地山が比較的安定している場合に採用され、地圧による影響を受けるケースが比較的少ないため、モルタル・コンクリート自体の材料劣化によるひび割れや剥離・剥落といった外形的な構造状態に着目するとともに、摩耗・風化による粗度係数の増大に伴う通水量の低下など水理機能に着目した性能管理を行うことを基本とする。

・素掘り形式

素掘り形式は、岩トンネルにおいて、地山が安定した状態にある場合に採用される工法である。

素掘りの性能管理は、地山の風化度合いによる肌落ちや小規模な崩落といった構造的安全性に着目するとともに、肌落ちや崩落による通水断面の不足に伴う通水性能の低下など、水理機能に着目した性能管理を行うことを基本とする。

・内張管形式

圧力トンネルの内張管形式のトンネルにおいては、内張管の摩耗や塗装の状態、または腐食の度合いなどに着目した性能管理を行うことを基本とする。

2)坑口

坑口は、鉄筋コンクリート構造物であり、地山の重量等上載荷重を受ける暗渠として設計されていることから、上載荷重の増加等に伴う鉄筋コンクリートのひび割れや変形といった外形的な構造状態に着目した性能管理を行うことを基本とする。

 

以上は、農業水利施設の機能保全の手引き「水路トンネル」から抜粋しています。「ポンプ設備」の過去問から手引きを個々に見たとき、パイプラインも開水路もおおむね1~30ページ付近に書かれているものばかりでしたので、これは!と思い抜粋しました。

 

次回は、このペースでストックマネジメント関連で、頭首工とかそういった手引きから類題を作ってみます。