かんがいの目的と効果について
目的と効果という日本語に結構悩まされることがあります。
ぼんやりは意味が分かるのだけれども、実はよくわかっていない。こういうことが私には度々起こり、故に問題が解けなくなってしまう状態です。そこで、改めて、意味を明らかにすることにしました。
まずは目的です。
目的 目標
「成し遂げようと目指す事柄」 「目的を達成しようとする具体的な手段」
昔、読んだ川原慎也さんの本なのですが、この目的と目標がすごく分かりやすく書かれていました。ちょっと前なので古い話ではありますが、
なでしこジャパンの目的と目標
目的 目標
「女子サッカーを広く認知してもらう」 「女子ワールドカップで優勝する」
分かりやすい!と思い、当時熟読しました。
さて、かんがいは何を成し遂げようと目指しているのでしょうか?そもそも「かんがい(灌漑)」って何なんでしょうか?用水とかんがいの違いなどごちゃごちゃになりそうなので整理してみます。
用水
「飲料・灌漑 (かんがい) ・工業・消火などに使用する水。」デジタル大辞泉より
飲料用水・灌漑用水・工業用水・消火用水という言葉がある通りなんですね。つまり、一般的に農業で言われている用水は「(かんがい)用水」「(かんがい)用水路」と解釈していいのでしょうか?
私の見解ですが、農業には多面的機能がありますので、そういった見方から
・かんがい用水
農業用水 ・親水用水
・地域用水
・その他(防災・減災)など
といった分け方になっているのではないかと推測します。水田にある「用水路」は正確には「(農業用水の内、主としてかんがい)用水路」とか「(農業)用水路(の内、主としてかんがいに使用)」といった感じですかね。
農水省の計画「農業用水(水田)」によれば
「本基準は、水田かんがいを主とする農業用水を確保・利用する土地改良事業(以下
「事業」という。)を主な対象とするが、これと一体的に利用される地域用水も含め、農業用水全般について総合的に勘案した」
とありますので、あながち間違っている訳ではなさそうです。
さて、かんがいなのですが、goo辞書によれば、
「農作物の生育に必要な水を、水路を引くなどして供給し、耕作地をうるおすこと。」goo辞書
とありました。つまり、かんがいの目的は何か?とは
「農作物の生育に必要な水を耕作地に供給して湿潤させることで、成し遂げようと目指す事柄はなんですか?」
ということになります。
農水省の水資源に関するパンフレットの中でかんがいの目的がありました。
③かんがいの目的
農作物の選定が降水量により異なるのと同様、かんがいの目的も、基本的には降水量の多寡により異なっている。
かんがいの目的は、原則として、作物が生育するために必要な水量、すなわち蒸発散量と降水量との差を、農業用水として補うことにある。
つまり、降水量が少ない乾燥地域では、降雨の量的不足の補完や用水全量の供給がかんがいの目的の大部分を占めることが多い。
一方、降水量が多い湿潤地域においても、干天が続き渇水が生じた場合は、乾燥地域と同様のことが言えるが、通常は降雨の時間的、空間的な不均一分布を補完することがかんがいの主目的となる。
さらに、東・東南アジア等の湿潤地域において大宗を占める水田かんがいにおいては、かんがいによりほ場を湛水することにより、耕起作業の容易化、雑草の繁茂の抑制、かんがい水中の養分の活用、塩類の除去など、営農上の多面的な目的の達成を図っている。
また、例えば、降雨が充分に得られない時期に用水を補完して作付時期を早めることにより、収穫直前の台風被害を避けること等が可能となる。
とすれば、
1.かんがいの目的
かんがいの目的は、原則として
①作物が生育するために必要な水量を農業用水として補う
②土中水分量の時間的、空間的な不均一な分布を調整して補完する
ことにある。
また、かんがいによりほ場を湛水することにより、
③耕起作業の容易化
④雑草の繁茂の抑制
⑤かんがい水中の養分の活用
⑥塩類の除去
など、営農上の多面的な目的の達成を図っている。
といった感じの答案内容でしょうか。
その他にも
⑦湛水による温度環境の調節、⑧かんがい水による肥料・農薬の流入、⑨地域の水環境や生態系の保全、などがあります。
次に効果ですが、
効果
「ある働きかけによって現れる、望ましい結果。」goo辞書
とのことです。とすれば、かんがいの効果は、
「農作物の生育に必要な水を耕作地に供給して湿潤させることによって現れる、望ましい結果」
ということになります。
ということは、目的をもったかんがいを行うことで、どういった結果になるのかを考えてみて導くことにします。
①作物が生育するために必要な水量を農業用水として補う
②土中水分量の時間的、空間的な不均一な分布を調整して補完する
先ほどの水資源に関するパンフレットでは、
「アジア各国における1965年からの15年間におけるコメの増産に寄与した要因の中で、かんがいの寄与率が最も高いと分析した研究例も見られる。」
とありますので、収量の増加に繋がると考えられます。
③耕起作業の容易化
④雑草の繁茂の抑制
⑤かんがい水中の養分の活用
⑥塩類の除去
⑦湛水による温度環境の調節
⑧かんがい水による肥料・農薬の流入
は営農における作業量と費用の低減に繋がると考えられます。
⑨地域の水環境や生態系の保全
は農業における多目的機能の維持といった感じでしょうか。
2.かんがいの効果
①収量の増加
作物が生育するために必要な水量を農業用水として補完することで干ばつ被害の防止・軽減することが出来ることから収量の増加に繋がる。
②営農における作業量と費用の低減
耕起作業の容易化や雑草の繁茂の抑制、肥料・農薬の流入は作業量の低減に、かんがい水中の養分の活用や塩類の除去は営農費用の削減につながる。
③農業における多目的機能の維持
かんがいにより地域の水環境や生態系の保全に繋がることから親水機能や防災・減災にも繋がる。
など、営農上の多面的な目的の達成を図っている。
といった感じの答案内容で、目的と効果を合わせて1ページになります。
その他にも作物選択の自由度向上、品質向上による収益向上などがあると思いますが、目的と効果でつないでみましたのでこんなところでしょうか。
次もかんがいです。自動水管理システムについてよくわからないのでこの機会に出題されると思って答案を作ります。