農業どぼくろく -農業土木録-

農業土木の仕事をしながら、農業土木関連の資格試験を取得する勉強内容を書いています。

農業における課題について

今回は問題Ⅰ対策として、農業における課題についてまとめていきます。

平成30年度の農業農村振興整備部会では「農業農村整備の新たなフロンティア~新しい時代が到来する中での農業農村整備の課題整理~」で課題を挙げています。ここから抜粋した課題を準備すると筋が良さそうなので、ここからまとめてみます。

 

1)人口減少

我が国の人口は、平成 20(2008)年をピークに減少傾向にある。人口集中地区を都市部、それ以外を農村部とすると、農村部では、昭和 45(1970)年以降、一貫して人口が減少基調にあり、都市部に比べて 20 年程度早く高齢化が進行している。また、人口減少は、条件の不利な中山間地域ほど進むとみられており、2010~2050 年の 40 年間に、山間農業地域で約7割、中間農業地域で約5割、平地農業地域で約4割の人口が減少すると予測されている。

 

2)農林水産業就業者の減少

農林水産業就業者数は年々減少し、平成 30(2018)年で 235 万人となっている。

基幹的農業従事者も減少しており、高齢化が進行している(平成 29(2017)年の基幹的農業従事者は 175 万人、その平均年齢は 67 歳)。

 

3)農地の減少

耕地面積は、ピーク時の昭和 36(1961)年から 56 年間で 164 万 ha(27.0%)減少した。

一方、荒廃農地の面積は、平成 29(2017)年時点で 28.3 万 ha である。このうち、再生利用可能なものが 9.2 万 ha、再生利用困難なものが 19.0 万 ha となっている。

 

4)土地持ち非農家の不在村地主化

総農家数が年々減少する一方、土地持ち非農家は増加している。総農家と土地持ち非農家の比率は、昭和 60(1985)年では9:1であったが、平成 27(2015)年では6:4となっている。

また、2015 年農林業センサスの分析結果によると、販売農家数の減少率は増加傾向にあり、自給的農家数が減少に転じたにもかかわらず、土地持ち非農家数の増加はわずかである。農地所有世帯数は急激に減少していることから、土地持ち非農家の不在村地主化が進行していることがうかがえる。

 

(5)農業水利施設を巡る状況

農業水利施設は、戦後の高度経済成長期に整備されたものが多く、老朽化が進行している。

施設の老朽化に伴い、突発事故の発生件数も増加している。

また、施設を管理する土地改良区の総組合員数は、農業者の高齢化等により減少傾向で推移しており、施設の管理体制が脆弱化している。

 

(6)頻発化・激甚化する自然災害

近年、集中豪雨の発生が増加傾向にあり、湛水被害等のリスクが高まっていて、農地や農地周辺の排水対策の強化が求められている。

また、南海トラフ地震の被害想定エリアには全国の基幹的農業水利施設の3割が存在しており、施設の耐震対策等の防災・減災対策の必要性が高まっている。

 

(7)深刻化する鳥獣被害

野生鳥獣による農作物被害額は減少傾向にある。しかしながら、鳥獣被害は営農意欲の減退、耕作放棄・離農の増加、さらには森林の下層植生の消失等による土壌流出、希少植物の食害、車両との衝突事故等の被害ももたらしており、被害額として数字に表れる以上に農業・農村に深刻な影響を与えている。

一方、近年、鳥獣被害対策を講じるだけでなく、野生鳥獣の肉を「ジビエ」として積極的に売り出し、農村振興につなげる動きが活発化している。

 

以上が整備部会で挙げていた農村が抱える課題でした。この中から重要と考えられるものを上げて、解決策を考え、その解決をする時にさらに出てくる問題は何か、そしてその解決策を遂行するときにどういうことに気をつけるかという問題であってほしい。と考え、次回は、白書からの切り口からの課題抽出についてやってみます。

 

過去問からのキーワード 令和元年の過去問より

過去問で私がわからないキーワードを抜粋して調べていきます。

一応、専門書や農水省の資料から抜粋していきますが、あくまでも私の理解を深めるアウトプットということで、参照程度にとどめていただければ幸いです。ここ違いますよ!などのご指摘ありましたら、嬉しいですので、その際はどんどん言ってください。

 

 

令和元年 Ⅱ-1問題

●景観配慮の基本原則

平成29年の「農業農村振興整備部会」の配布資料に掲載されていました。翌年の平成30年度・令和元年の農業農村振興整備部会の配布資料をチェックしておいたほうが良いかもしれません。

 

  景観配慮における基本原則として「除去・遮蔽」、「修景・美化」、「保全」、「創造」の4つがある。

「除去・遮蔽」-景観の質を低下させる要素を取り除くこと

「修景・美化」-周辺構造物の形や色彩等を用いたり、美化要素を加え周辺景観になじませること

保全」-調和のとれた状態を保全し維持すること

「創造」-新たに要素を付加することで新たな空間調和を創り出すこと

 

●農村地域の自然環境の特徴

「環境との調和に配慮した事業実施のための調査計画・設計の技術指針」に掲載されていました。

 

 我が国の農村地域では、水田などの農地のほか、用排水路・ため池・二次林といった多様な環境が、農業の営みを通じて有機的に結合し、多くの生物を営む環境や良好な農村景観を保全・形成してきた。

 例えば、水田では、代かきや耕起により植生の遷移が抑えられ、植物に覆われない浅い水辺が存在することによりカエル類の産卵場所が保全されてきた。また、水路やため池では、定期的な泥上げにより腐敗した泥の堆積が抑えられ、タナゴ類の生息環境が保全されてきた。

- 中略 -

 このような自然は、原生自然とは異なり、農業生産活動を前提として成立している二次的自然であることから、その保全・形成には持続的な農業の営みが不可欠である。

 

その他、生物多様性の危機をもたらしている具体例・影響、環境配慮対策についても書かれていました。チェックとしては、第2章までは出題されていますが、その続きをチャックしておきます。

 

令和元年Ⅱ-2問題

●重要度区分AA種のため池

こういった区分があるということ自体を知りませんでした。

 

重要度区分AA種のため池の定義

堤体下流に主要道路や鉄道、住宅地等があり、施設周辺の人命・財産やライフラインへの影響が極めて大きい施設

②地域防災計画によって避難路に指定されている道路に隣接するなど、避難・救護活動への影響が極めて大きい施設

 

更新してしまってから気づいたんですが、書き残しの消し忘れってあるものなんですね。もう修正しましたが、今度からは気をつけます。

次回は問題Ⅰ対策で書きこんでいきます。

ストックマネジメント関連の用語(キーワード)

勉強を進めていくと、「これってなんだっけ?」ということが多くなってきます。特に想像出来ないものはなかなか理解できないといったことが私にはあります。

そこで、自分なりにキーワードをまとめておこうと思います。これは、前回の頭首工の機能保全の時に思いつきました。キーワードは手始めに機能保全の手引きから抜粋していきます。

 

ストックマネジメント

施設の管理段階から、機能診断を踏まえた対策の検討・実施とその後の評価、モニタリングまでをデータベースに蓄積された様々なデータを活用しつつ進めることにより、リスク管理を行いつつ施設の長寿命化とLCCの低減を図るための技術体系及び管理手法の総称。

 

アセットマネジメント

アセットマネジメントとは、一般的には金融資産や不動産などを管理・運用すること(広義のアセットマネジメント)を指す。近年では公共事業により造成された施設について、維持管理や補修などをどのように効率的に行うかといった技術体系及び管理手法の総称(狭義のアセットマネジメント)として使われている。

 

機能保全

 全施設又は施設系の機能が失われたり、性能が低下することを抑制又は回復すること

 

長寿命化

施設の機能診断に基づく機能保全対策により残存の耐用年数を延伸する行為

 

ライフサイクルコスト(LCC)

施設の建設に要する経費に、供用期間中の運転、補修等の維持管理に要する経費及び廃棄に要する経費を合計した金額

 

機能保全コスト

施設を供用し、機能を要求する性能水準以上に保全するために必要となる建設工事費、補修・補強費等の経費の総額。

 

耐用年数(耐用期間)

施設の水利用性能、水理性能、構造性能が低下することなどにより、必要とされる機能が果たせなくなり、当該施設が供用できなくなるまでの期間として期待できる年数。

 

要求性能

施設が果たすべき機能や目的を達成するために必要とされる性能。

 

機能診断

機能診断調査と機能診断評価を合わせた概念。

 

機能診断調査

施設の機能の状態、劣化の過程及びその原因を把握するための調査。

 

機能診断評価

機能診断調査の結果を評価すること。

 

変状

初期欠陥、損傷、劣化を合わせたもの。

(具体的には、ひび割れ、剥離、欠損などの状態で、施設が健全な状態で本来期待されている機能や状況と比較して、異なっている状況を指す。)

 

劣化

立地や気象条件、使用状況(流水による浸食等)等に起因し、時間の経過とともに施設の性能低下をもたらす部材・構造等の変化。

 

初期欠陥

施設の計画・設計・施工に起因する欠陥。

コンクリートでは、施工不良等を含み、供用前又は供用後に発生する乾燥収縮によるひび割れ、豆板、コールドジョイントなど。

 

損傷

偶発的な外力に起因する欠陥。

時間の経過とともに施設の性能低下が起きたものでないもの。衝突や地震等に起因する欠陥。

 

機能保全計画

性能指標や健全度指標について管理水準を定め、それを維持するための中長期的な手法をとりまとめたもの。

 

機能保全対策

機能保全計画に基づく工事等のこと。

 

予防保全

 当該施設に求められる性能が、管理水準以下に低下する前に、リスク管理を行いつつ、機能保全コストの低減、リスク軽減等の観点から、経済的に耐用年数の延伸を図る目的で実施する対策

  

事後保全

 当該施設に求められる性能が、管理水準以下に低下した後に実施する対策

 

補修

主に施設の耐久性を回復又は向上させること。

 

補強

主に施設の構造的耐力を回復又は向上させること。

 

改修

失われた機能を補い、又は新たな機能を追加すること。

 

更新

施設又は設備を撤去し新しく置き換えること。なお、施設系全体を対象とした場合は、施設系を構成する全施設を更新する場合だけではなく、補修、補強等を包括して行うことも更新という。

 

 劣化特性

 機器・部材や部品等の故障の起こり方(劣化特性)は、一般的に経年劣化型、脆化型、突発型に分類され、それぞれの劣化特性に適応した保全の方式が設定できる。

 

重要度

設備機能の維持に対して影響度が大きい機器・部品等については、不具合の発生を極力回避するよう予防保全を適用して設備機能を確実に確保する一方、影響度の小さい機器・部品等については、事後保全を適用し、壊れるまで使うことで費用対効果を最大限に得ることを考慮している。

 

こうやって用語を並べていくと、例えば補修と改修に補強や更新って似たような言葉ですが、それぞれ意味が違うことが分かりました。少しすっきりしました。

次回は、過去問からキーワードを抜粋して、調べてみます。それは、択一問題に掲載されていたものも併せて探します。このくらいやって、次のステップに移っていくこととします。試験勉強できるのはあと10日ですので、追い込んで頑張ります!

農業水利施設の頭首工の機能保全

ストックマネジメントということで、類題として、頭首工の機能保全について回答してみようと思います。頭首工は単一の施設ではないため、今回は基本事項だけにしておきます。多分、問題Ⅱ-1でこの部分を深堀するには枚数が不足するので、ある程度要点を絞っておく必要があると想定するからです。

 

問題

「農業水利施設の頭首工の構成施設について説明し、各施設のうち3つ以上の施設についての管理における留意点を述べよ。」

 

 

1.頭首工の構成施設

機能保全の手引きより抜粋すると、頭首工は4つに構成されています。頭首工の構造を覚えるために、イメージしやすいように解説していきます。解説は私の知識をまとめるためのものですので、あくまでも参照にしていただく程度でお願いします。また、不備などありましたらご教授いただけますと助かります。

 

①取入口 - 取水庭、ゲート、計量施設

 

頭首工は川から農業用水を得るため、取入口(とりいれぐち)から用水を流入させます。その時に、水の流れが速いと勢いがついていて施設を強固にしないといけません。そのため、流れを緩やかにする取水庭(しゅすいてい)、流量を調整するゲート、流量を計測する計量施設があります。これらが取入口グループです。

 

②取水堰 - 堰体、エプロン、土砂吐、洪水吐、ゲート

 

次に取入口だけですと川の水位が低い時には流量を確保できない場合があります。そのため、川をせき止める取水堰(しゅすいぜき)を設置します。この堰の本体を堰体(えんたい)といいます。この堰は固定のものと稼働するものがあり、稼働するものはラバーで出来たものや転倒するもの、ゲートで出来たものがあります。堰体で川の流れをすべて止めるのではなくて、越流させて下流にも水が流れるようにしていきます。その時、越流した水が下流の床を洗堀(せんくつ)していくようになりますので、この部分を保護するためにエプロンを設置します。その他、河川の水は土砂を含んでいますので、稼働堰の場合はその土砂を出す土砂吐(どしゃばき)、豪雨などで河川水位が上昇した時に水を出す洪水吐(こうずいばき)を設置しています。これが取水堰グループです。

 

 

③附帯施設 - 魚道・沈砂池・その他(舟通し等)

 

附帯施設としては、川をせき止めているので、魚を主とした河川生物が上下流を行き来することが出来なくなってしまいます。そこで、魚が通る道と書いて魚道(ぎょどう)を設置しています。また、同時に船が通れないというのもありますので、舟通し(ふなどおし)、河川水には土砂が含まれているので、その土砂を沈めて用水として利用する沈砂池(ちんさち)などを設置しています。これが附帯施設グループです。

 

④管理施設 - 操作設備・管理橋・その他(受配電設備、安全施設等)

 

最後に頭首工を操作したり、様子を見に行くのに上ったり渡ったりする管理橋、当然電気を用いて稼働させますので受配電設備、転落などしないように安全施設を設置しています。以上が管理施設グループです。

 

2.各施設の管理における留意点

各施設といっても、大きくはコンクリートで出来た施設と施設機械設備の集合体なので、分かりやすいのはコンクリートの部分だと思います。そこで、機能保全の手引きから抜粋します。

 

①固定堰

 

無筋コンクリートが主要な構造材料であり、性能低下はコンクリートの摩耗などコンリート自体の劣化と、洗掘やパイピングによる変形・不同沈下など構造物の外形的な状態に着目する。

 

②可動堰

 

鉄筋コンクリートが主要な構造材料であり、性能低下はコンクリートのひび割れや摩耗などコンリート自体の劣化と、洗掘やパイピングによる変形・不同沈下など構造物の外形的な状態に着目する。

 

③エプロン

 

鉄筋コンクリートが主要な構造材料であり、性能低下はコンクリートのひび割れや摩耗などコンリート自体の劣化と、洗掘やパイピングによる不同沈下など構造物の外形的な状態に着目する。

 

④護床工

 

無筋コンクリートブロックや捨石が主要な構造材料であり、下流側の洗掘を受けて護床工下部の河床材の吸出しによる不同沈下や洪水による流出を生じやすいことと、ブロックの摩耗が進行すると所定の減勢効果が得られず、下流側の河床材の吸出しや洗掘を受けるため、護床工下部の空洞化や不陸が進行しやすいので、これらの部分について着目する。

 

⑤護岸・取付擁壁

 

取付部の護岸や高水敷保護工は背面土砂や基礎土砂の吸出しによる変形やひび割れ変状が生じやすい。水中部の洗掘が著しい場合は、土砂の吸出しの危険性が高いため、水中部の洗掘状況を把握しておくことが望ましい。

 

⑥魚道

 

魚道は、コンクリートのひび割れや摩耗など、コンクリート自体の劣化以外に、洗掘・堆砂による河床変動やミオ筋の変化等によっても、その機能に支障をきたす場合があることから、コンクリート部材等の劣化だけでなく河川状況の変化も継続的に把握しておく必要がある。

 

 

以上ですが、やればやるほど、用語(キーワード)の理解がもしかするとⅡ-1攻略なのかなと思い始めてきました。ストックマネジメントの最後は、用語のまとめをしておこうと思います。

農業水利施設の水路トンネルの機能保全

ストックマネジメントに関する過去の出題では、平成27年度に「開水路」、平成28年度に「パイプライン」、平成30年に「ポンプ場」が試験に出題されました。この問題の類題は是非押さえておきたいと思います。平成30年に農水省の改定された設計基準で「ポンプ場」と「水路トンネル」の二つでしたので、今回は「水路トンネル」について類題を解いていきます。

 

問題

「農業水利施設の水路トンネルの特性・区分による分類について説明し、性能管理における覆工形式ごとの着目点について述べよ」

 

 

 

 

①水路トンネルとは

用水や排水を通水する施設を水路といい、その水路にも開水路と菅水路(パイプライン)に分けられます。分けられた開水路の中のひとつにトンネルがあります。つまり、用排水を通水するトンネル施設を水路トンネルというわけです。

 

②水路トンネルの水理特性による分類

・無圧トンネル

計画流量が自由水面をもって流れ、内水圧が作用しないトンネル。

・圧力トンネル

計画流量が満流となり、内水圧が作用するトンネル。

圧力トンネルは、コンクリート覆工形式と内張管形式に区分される。

 

③ 水路トンネルの地山の地質区分による分類

・岩トンネル

比較的風化の進んでいない岩盤や、固結度の高い軟岩等からなる地山に構築されるトンネルで、覆工形式としては、素掘り、モルタル・コンクリート吹付け、無筋コンクリート覆工(支保工無)が採用される場合が多い。

・土砂トンネル

未固結の土層や固結度の低い軟岩等からなる地山に構築されるトンネルで、覆工形式としては、無筋コンクリート覆工(支保工有)、鉄筋コンクリート覆工(支保工有)が採用される場合が多い。

 

④水路トンネルの断面形による分類

・円形

圧力トンネルの場合、内空断面形状は原則として円形が選定されるほか、シールド工法等の機械施工による場合は円形が選定される。

・馬てい形

トンネルの内空断面の直径がおおよそ2.0 m 以上の無圧トンネルでは、馬てい形断面が選定される場合が多く、農業用水トンネルの多くは標準馬てい形です。

・ほろ形

トンネルの内空断面の直径がおおよそ2.0m以下の無圧トンネルでは、ほろ形断面が選定される場合が多い。

 

⑤水路トンネルの覆工形式による分類

・無筋コンクリート覆工形式(支保工有・無)

無筋コンクリート覆工形式は、土被りが小さい等地山が安定していない部分を除き、通常、トンネル本体で採用されるケースが多い。

・鉄筋コンクリート覆工形式(支保工有)

鉄筋コンクリート覆工形式は、土砂トンネル等において、地山が安定していない場合に採用されているケースが多い。

モルタル・コンクリート吹付け形式

モルタル・コンクリート吹付け形式は、無圧トンネルや岩トンネルにおいて、地山が比較的安定している場合に採用されているケースが多い。

・素掘り形式

素掘り形式は、岩トンネルにおいて、地山が安定している場合に採用される。

・内張管形式

内張管形式は、圧力トンネルにおいて、地山が安定していない場合や内水圧が大きい場合に採用されているケースが多い。

 

水路トンネルはこういった形式が異なっているので、機能保全するにしても構造によって異なり、分類をみてもわかる通り、地山の影響が一番大きいです。故に、覆工形式が選択されたのは、地山の影響を加味して選定されていることから、個々の覆工形式ごとに性能管理していくことが次からの回答になります。

 

⑥覆工形式ごとの性能管理の着眼点

1)トンネル本坑

・無筋コンクリート覆工形式(支保工有・無)

無筋コンクリート覆工形式は、土被りが小さい等地山が安定していない部分を除き、通常、トンネル本体で採用されるケースが多く、地圧(塑性圧、緩み圧、偏圧)によるひび割れや変形といった外形的な構造状態に着目した性能管理を行うことを基本とする。

なお、圧力トンネルの場合では、内水圧によりひび割れや変形を生じる場合があることに留意する必要がある。

・鉄筋コンクリート覆工形式(支保工有)

鉄筋コンクリート覆工形式は、地山が安定していない場合に採用されているケースが多く、その構造機能の低下は、地圧の影響に大きく左右される。このため、地圧(塑性圧、緩み圧、偏圧)によるひび割れや変形といった外形的な構造状態に着目した性能管理を行うことを基本とする。

なお、圧力トンネルの場合では、内水圧によりひび割れや変形を生じる場合があることに留意する必要がある。

モルタル・コンクリート吹付け形式

モルタル・コンクリート吹付け形式は、無圧トンネルや岩トンネルにおいて、地山が比較的安定している場合に採用され、地圧による影響を受けるケースが比較的少ないため、モルタル・コンクリート自体の材料劣化によるひび割れや剥離・剥落といった外形的な構造状態に着目するとともに、摩耗・風化による粗度係数の増大に伴う通水量の低下など水理機能に着目した性能管理を行うことを基本とする。

・素掘り形式

素掘り形式は、岩トンネルにおいて、地山が安定した状態にある場合に採用される工法である。

素掘りの性能管理は、地山の風化度合いによる肌落ちや小規模な崩落といった構造的安全性に着目するとともに、肌落ちや崩落による通水断面の不足に伴う通水性能の低下など、水理機能に着目した性能管理を行うことを基本とする。

・内張管形式

圧力トンネルの内張管形式のトンネルにおいては、内張管の摩耗や塗装の状態、または腐食の度合いなどに着目した性能管理を行うことを基本とする。

2)坑口

坑口は、鉄筋コンクリート構造物であり、地山の重量等上載荷重を受ける暗渠として設計されていることから、上載荷重の増加等に伴う鉄筋コンクリートのひび割れや変形といった外形的な構造状態に着目した性能管理を行うことを基本とする。

 

以上は、農業水利施設の機能保全の手引き「水路トンネル」から抜粋しています。「ポンプ設備」の過去問から手引きを個々に見たとき、パイプラインも開水路もおおむね1~30ページ付近に書かれているものばかりでしたので、これは!と思い抜粋しました。

 

次回は、このペースでストックマネジメント関連で、頭首工とかそういった手引きから類題を作ってみます。

農業水利施設のストックマネジメントの実施サイクル

前回に引き続き、ストックマネジメントについての回答なのですが、前回の農水省の資料、「農業水利施節の機能保全の手引き」を見てみますと、試験に出そうな文章があるなーって思い、引き続きやってみました。

 

問題

「農業水利施設のストックマネジメントの実施サイクルの各項目を3つ以上挙げ、それぞれの特徴と留意点について述べよ」

 

 

農水省の資料、「農業水利施設におけるストックマネジメントの取組について」によると、

「ストックマネジメントは、

①管理者による適切な日常管理、②定期的な機能診断、③施設の劣化予測や工法等の比較検討による対策計画の作成、④同計画に基づく対策の実施、⑤これらの過程を通じて得られる施設状態や対策履歴等のデータの蓄積と利用、

などのサイクルを繰り返すことにより実施」

とあります。

 

また、手引きにも記載されていますので、そちらを参照して各項目ごとに答案を作成していきます。

 

①日常管理

特徴

施設の日常的な管理は、施設を良好な状態に保つとともに、施設の経年的な劣化や地震等による偶発的な損傷等を把握する機会であり、施設に本来要求されている性能の発揮とその維持のために重要な行為である。

留意点

日常管理は管理の結果の整理や記録を含め適切に行うことが求められ、通常の維持管理の範囲で行う軽微な補修等は、原則施設管理者が行う。また、高度な機能診断が必要な変状を発見した場合には、施設管理者から施設造成者に情報提供を行う等の対応が的確になされる必要がある。

 

②機能診断

特徴

施設の機能の状態、劣化状況を把握するとともに、最適な対策を検討するため、機能診断を定期的に実施する。

留意点

施設管理者が行う日常管理、施設監視に活かすため、施設の状態や性能低下の要因を踏まえた施設監視のポイント等を施設造成者(機能診断者)から施設管理者にわかりやすく引き継ぐことが重要である。

 

③機能保全計画の策定

特徴

機能保全計画の検討に先立ち、施設管理者や関係機関の意向を踏まえた上で、リスク管理の視点も考慮して施設ごとの重要度評価等に応じた管理水準を設定する。

留意点

機能保全計画は原則施設毎に策定するものであり、「劣化予測」、「対策工法」、「対策実施シナリオ」、「機能保全コスト」及び「施設監視計画」についてそれぞれ取りまとめて策定する。

 

④施設監視

特徴

機能診断実施後、劣化予測の精度を高め、適時適切な時期に対策を行う観点から、施
設監視計画に基づき、施設管理者と施設造成者(機能診断者)が情報共有しつつ施設機
能の監視を行う。

留意点

施設監視に当たっては、可能な範囲で、機能診断の際に設定した定点を用いて、機能
診断時点からの施設状態の変化を把握することが重要である。

 

⑤対策工事

特徴

事業実施段階においては、必要な詳細調査(実施設計)を行い、対策工法を確定する。

留意点

機能保全計画及び施設監視結果に基づき適切な時期に対策を実施するため、事業化に向けた各種計画策定や法令上の手続、費用負担の考え方を含め、関係者との調整を早めに行ない、合意形成を図ることが重要である。

 

⑥データの蓄積

特徴

過去の機能診断の結果や補修工事の履歴等を電子化されたデータベースに蓄積し、一元管理することが重要である。これにより、施設の経年的な劣化を的確に把握することが容易となり、劣化予測の精度向上や効果的な対策工法の検討に資するなど、より効率的なストックマネジメントの実施と技術の向上を図ることが可能となる。

留意点

蓄積された情報は、関係機関で共有する(リスクコミュニケーションを含む)とともに、常に参照できるように整備しておくことが重要である。

 

次回もストマネについてやってみようと思います。

農業水利施設のストックマネジメントにおける機能保全計画の策定について

凄く長いタイトルで恐縮ですが、勉強をしている際に手引きをみていると、機能保全の策定の部分で分類されているので、その点をまとめておこうと思ってこういうタイトルにしてみました。

 

問題

「機能保全計画の策定において、それぞれ取りまとめる事項について述べよ」

 

 

①劣化予測

当該施設の劣化状況等を踏まえ、同一の検討を行うことが可能な単位ごとに分類(グルーピング)し、劣化要因に応じてそれぞれのグループの状況に適した手法で検討する。

 

農業水利施設は、単一の施設ではなく役割毎に構成された施設ですので、一様な対応をするのが難しいですが、例えば、開水路や貯水池のコンクリートの補修などは同じような対応が可能ではないか、一緒に対応できないかとかそういうことをここでは言っていると想定されます。

 

②対策工法

機能診断、劣化予測等の結果を踏まえ、水利用性能、水理性能、構造性能等における要求性能の確保の観点や、施工性等の観点から妥当性が見込まれる対策工法を検討する。この際、極力複数の案を検討する。

 

対策工法だけではなく、ストックマネジメントの手法では、新工法などを積極的に検討するということもあり、妥当性が見込まれる工法は複数案検討しておくという部分を押さえておきます。

 

③対策実施シナリオ

各種の検討結果を踏まえ、対策工法とその実施時期を組み合わせたシナリオを作成する。この際、技術面・経済面等も含め妥当であると考えられる対策の組合せを検討し、極力複数のシナリオを設定する。

 

これも、前述の対策と同様で、単一のシナリオや対策だけではなく、組み合わを変えるなど柔軟に対応できるようにしておくということでしょうか。

 

④機能保全コスト

対策実施シナリオごとに算出する。シナリオを選定する際には、機能保全コストが最も経済的となるシナリオの選定を基本とする。しかしながら、経済性のみで判断するのではなく、重要度など施設の有するリスク、環境への影響、維持管理面等に関する施設管理者や地方公共団体等の意向等も考慮し、総合的に判断する必要がある。

 

⑤施設監視計画

監視を行う測点(部位)、監視内容・項目、頻度、監視に当たっての留意事項、監視実施者、監視結果の記録、異状時の措置、次回予定診断時期について施設造成者(機能診断者)と施設管理者が情報共有しつつ策定する。

 

補足的ですが、「対策工事を当面実施しない施設において施設監視(継続監視)とする対応もストックマネジメントの重要な取組の一つである。」とありました。

 

覚え方としては、

劣化の予測→その劣化に応じた対策工法→それをいつ実施するか→加えて機能はどこまで保全できるか→施設を観察し続けるにはどうしたらよいか、といったところでしょうか。

 

次もストックマネジメントについてやっていこうと思います。ストマネストマネ、だいぶ頭の中に入ってきました。